マインドフルネスとは
ご存じの方も多いと思いますが、マインドフルネスとは、起源が仏教にあり、瞑想を通して今この瞬間に心を向け、あるがままの自分を観察する方法です。
瞑想には、集中瞑想と観察瞑想という2種類がありますが、マインドフルネスは、意識を外に向けて周りの世界を隅々まで感じ取ろうとする観察瞑想です。
マインドフルネスはすべてに対して「ジャッジしない」ということを1つの軸にしています。
ネガティブな出来事に反応しやすい扁桃体
大脳辺縁系にある扁桃体は、五感を通じて脳に入った情報に対して、感情、情報の処理を行っています。そして記憶をつかさどる海馬や、もっとも高次な情報処理をする前頭葉とも相互に情報のやりとりをしています。
扁桃体は、どう感じたかの情報を海馬や前頭葉に送り記憶させ、次に同じような状況が訪れたときに備えられるよう学習しています。
なかでも、扁桃体は恐怖や不安といったネガティブな出来事に反応しやすく、生命を守るために条件付けを行います。
扁桃体の暴走は前頭葉などによるブレーキで制御されていますが、ストレスで制御が外れる(脱抑制)と、弱い刺激にも扁桃体が過剰反応するようになります。
うつ症状の人は、前頭葉の活動が弱いため、意欲や興味が低下し、扁桃体の働きが活発になっています。
デフォルトモードネットワーク(DMN)
私たちの脳は、何にも集中していないぼんやりしている時も、車のアイドリングのように何らかの活動を続けています。これをデフォルトモードネットワーク(DMN)といいます。DMNが脳全体のエネルギーの60~80%を使っているともいわれています。DMNは人間の基本設計の一つで、なくすことはできない働きですが、これが活発すぎることで、脳が常に働き続けて消耗し、うつや不安につながるとされています。
マインドフルネス瞑想には、このDMNの過剰な働きを静め、落ち着かせる効果があります。

マインドフルネス瞑想の手順
マインドフルネス瞑想の手順です。他にもさまざまなやり方があります。
(1)背筋を伸ばして椅子に座るか、肩幅程度に足を広げて立ちます。
(2)目を閉じてお腹に手を当てます。
(3)鼻から静かに息を吸い込みながら、ゆっくりとおなかが膨れていく感じをお腹と手のひらでしっかり感じていきます。お腹の皮・筋肉が膨らむ感じ、手のひらが膨らんだお腹で押されていく感じなど、しっかり感じてみましょう。
(4)お腹が膨らみきったら、今度はゆっくりと息を吐き出していきます。この時もお腹がへこんでいく感じを手のひらやお腹の感覚でしっかりと感じてください。
(5)思考や感情が浮かんだら、そのたびに気づいて呼吸を行っている身体感覚に意識を戻します。この呼吸を時間の許す限り繰り返します。短時間でも大丈夫です。
認めて受け入れる
過去を悔やむような雑念が浮かんできたら、「そうか、言わなかったことを後悔しているんだね。わかった、わかった。でも、もう悔やんでも仕方ないよ。でも、その気持ちはわかったからね。」と自分の感情と現状をそのまま受け止めて、「わかりました」という認印を押すかのように、淡々と受け流していきます。
ポイント
① 浮かんできた雑念をジャッジしない(良い・悪い、成功・失敗などと判断しない)
② 考えを認めて、受け入れる
こうして、次々と雑念を処理していきます。
傷ついた時や悲しい時、許せないほどの怒りを感じた時は、なかなか頭から離れてくれず、扁桃体が恐怖に脅え、何度もしつこく押し寄せてきます。
ここで見て見ぬふりをすると逆効果で、扁桃体はますますネガティブな領域に入り込み、騒ぎ立てます。
そこで、そのまま受け止め、「わかったよ」とその感情を理解してあげると、扁桃体も安心して落ち着くため、理性をつかさどる前頭葉が生産的なアクションを考えられるようになります。
自分の感情を自分でわかってあげることが大切となります。

マインドフルネスを習慣化してみましょう
仕事中、勉強中、喧嘩中、気持ちが落ち着かない時はもちろん、朝目覚めた時、食事中、歩行中、入浴中、寝る前など、1日10分でも、1分でもマインドフルネスを行ってみてください。習慣化して脳のバランスを保つことで、自己中心的な解釈をしていたことに気づき、客観性を取り戻せます。我欲のとらわれから意識を外すことで、多様な価値観を受け入れられるようになり、苦しみを手放せるようになっていきます。
扁桃体を落ち着かせるために摂取するとよい食品について、次回ブログに挙げました。よろしければご覧ください。
参考文献:池谷裕二監修『脳と心のしくみ』(新星出版社)
ジョン・カバットジン著『マインドフルネスストレス低減法』(北大路書房)