「心が通じ合わない…」カサンドラ症候群

心が通じ合わない二人

パートナーや家族、職場の人との関係に、「心が通じ合わない」という苦しみを感じていませんか?

◆話しかけても返事が無いかそっけなく、会話にならない
◆いつも不機嫌そうな顔をしている
◆疎通がとれず、仕事がスムーズにいかない
◆共働きで忙しくても家事や育児に協力してくれない
◆食事を作っても、いつも「いただきます」や「ごちそうさま」が無い

など、
毎日顔を合わせながらも、虚しさや孤独を感じる…

そのような相手の背景にあるかもしれないのが、アスペルガー症候群などのASDという発達特性です。
これは「性格の問題」でも「努力不足」でもなく、認知や感情の感じ方・伝え方に違いがある脳の特性です。

疎通がとれず虚しく苦しい

ASDの特徴として以下のような傾向があります。

◆非言語コミュニケーションの苦手さ

• 表情・ジェスチャー・声の抑揚から気持ちを読み取ることが難しい
• 相手の「察してほしい」が伝わりにくい

 想像力の幅が狭く、共感が難しい

• 自分と違う立場・感情を想像するのが苦手
• 「なぜ怒っているのか」が理解できず戸惑ってしまう

◆ 曖昧な言葉・空気を読むことが苦手

• 「ちょっと手伝って」の“ちょっと”が分からない
• ねぎらい・気づかいの表現が形式的、または抜け落ちやすい

 身近にいる人にこうした傾向があると、適切な意思疎通や関係性を築く事が難しくなります。その事実を相手も周囲も理解せず、本人だけで苦しむと、不安や抑うつなどの心身の不調を来す状態となる事があります。このような状態をカサンドラ症候群といい、特に密接した関係で多くの時間を共に過ごす、夫婦間で起こる場合が多いと言われています。
 

関係性が築けない

 ASDの発現は、男性が女性の4倍ほど多いため、女性側にカサンドラ症候群の発症割合が高くなっています。このため、男性側が発症してもいても、認識してもらいづらい例も見られています。
 また、ASDである相手が、大きなトラブルも無く一定以上の社会適応性を身につけている場合は、外部の人にカサンドラ症候群の辛さや悩みを理解してもらえない例も見られています。

 このような場合も、相手と二人だけの問題として孤立しない事が大切となります。
 友人や家族、第三者、カサンドラ症候群の当事者が集まる自助グループで、相談をしたり共感を得る事で少しでも楽になれる事と思います。

相手への見方としては、


◇感じ方の違いを「人格の問題」ではなく「特性の違い」として見る
◇感情の通じにくさを、「無関心」や「冷たさ」と誤解しない

とすると、憤りや虚しさが和らぎます。私の場合は、なぜ相手がいつも不機嫌なのか長い間理解出来ず苦しんだので、特性を知り「悪意があってしている訳では無かったのか。」と認識出来ただけで、納得し諦めが付きだいぶ楽になりました。
 
 そして、「相手は相手」「自分は自分」として相手に入り込まず、「分かりあえない前提」で工夫をしながら自分の時間を大事にし、ゆっくりと呼吸をして過ごしていく事が、お互いにとっても大切な事となるでしょう。

参考文献:岡田尊司著『カサンドラ症候群 身近な人がアスペルガーだったら』(角川新書)